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1 造血幹細胞(hematopoietic stem cell)
造血器官が血球を産生して細胞数を一定に保つために,血液細胞分化の段階で成熟を伴わない細胞の増殖が行われている.これを担うのが造血幹細胞で,自己と同じ細胞を産生する自己再生能/自己複製能(self-renewal potential/self-replicate potential)と増殖能(proliferative potential)を有し,同時にすべての系統の血液細胞に分化しうる能力(differentiation potential)をもつ.
図1に造血幹細胞とその分化について略示するが,最も未分化な造血幹細胞(hematopoietic stem cell,HSC)は,リンパ球も含んだすべての血球に分化しうる全能性(totipotent)である.幹細胞にも段階があり,骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞を多能性幹細胞(multipotent or pluripotent stem cell)と呼ぶ.骨髄系幹細胞からさらに分化した各系統(赤血球系,顆粒球-単球-マクロファージ系,血小板系)に固有な幹細胞は,ある種の血球系統に方向づけられた幹細胞(committed stem cell)であり,単能性幹細胞(monopotent stem cell)ないし前駆細胞(progenitor cellまたはprecursor cell)と呼ぶ.自己再生能は多能性幹細胞になると失われていき,単能性幹細胞ではもはや存在しない.造血幹細胞が自己再生するためにはニッチ(ニッシェ,niche)という特別な環境を必要としており,骨芽細胞がニッチを提供している.造血幹細胞はニッチを離れると分化し,後記のような造血因子に反応して増殖を開始する.
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