Ex Laboratorio Clinico・54
赤血球アデノシンデアミナーゼ過剰産生による遺伝性溶血性貧血の研究
藤井 寿一
1
,
三輪 史朗
1
1東京大学医科学研究所内科
pp.647-652
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911258
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赤血球酵素異常による遺伝性溶血性貧血の研究
共著者の三輪は1961年UCLA(University of Califbrnia at Los Angeles)のValentine教授の研究室に留学中,赤血球ピルビン酸キナービ(PK)欠乏症を発見し1),帰国後,放射線医学総合研究所,虎の門病院を経て,1971年山口大学第3内科に赴住後も一貫して血液学,特に赤血球酵素欠乏による遺伝性溶血性貧血の研究を進めてきた.1960年代のこの分野の研究では,溶血性貧血を起こす患者酵素の多くは電気泳動の易動度が正常と異なるとか,基質に対する親和性が悪いことなどが判明し,量的欠乏ではなくて質的異常であることがしだいに分かってきた.
1960年代後半になると,米国City of Hope National Medical Ccnterの吉田昭博士により,アメリカ黒人の18%にみられ,活性が正常なG6PD異常症(G6PD A (+))の血液10lと,活性がTE常の4倍に増加したG6PD異常症(G6PD Hcktoen)の血液1.7lより異常酵素が精製され,単一アミノ酸置換が証明され2,3),遺伝性溶血性貧血を起こすその他の赤血球酵素異常症の大半もヘモグロビン異常症と同様に,変異酵素の産生によることが考えられるようになった.
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