- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
関節液が関節内に貯留することは,リウマチ性疾患の原因となる病因が関節液中に存在していると考えてよい.関節液は関節内の起こっている病態を反映しているので診断に役立てることができる.
リウマチ性疾患は,関節液中に細胞量が多い炎症性と少ない非炎症性の疾患群に分類することができる.炎症性リウマチ性疾患の代表的疾患は,関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA),結晶誘発性関節炎(痛風:尿酸ナトリウム結晶,図1,偽痛風:ピロリン酸カルシウム結晶,図2,ハイドロキシアパタイト沈着症,ステロイド結晶誘発性関節炎,人工関節置換後の関節炎など),感染性関節炎,血清反応陰性脊椎炎,成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia,ATL)などである.いずれの疾患も治療方針が異なるので,正確な関節液診断が要求される.関節液細胞数が2,000/μl以上のとき,これらの疾患の可能性が高い.結晶が関節液中に同定できて,貪食像が確認できれば結晶誘発性関節炎の診断が可能である.細胞数が100,000/μl以上と著しく高く,グラム(Gram)染色あるいは培養で菌体が同定できれば確定診断できる.
非炎症性リウマチ性疾患の代表的疾患は,変形性関節症,アルカプトン尿症,外傷性関節炎,ヘモクロマトーシスなどの代謝性疾患である1).関節液細胞数が2,000/μl以下のとき,これらの疾患の可能性が高く,詳細に関節液外観,結晶検査,細胞診検査を実施することではっきりした疾患がみえてくる.このように,関節液中の病因を探索することでリウマチ性疾患を鑑別診断することができる.
本稿では,痛風,偽痛風以外の炎症性,非炎症性リウマチ性疾患を中心に関節液所見について解説する.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.