今月の主題 肝硬変と肝癌
肝硬変から肝癌へ
HBV感染と肝癌の発生
三田村 圭二
1
1東京大学医科学研究所・感染症研究部
pp.1564-1566
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221086
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
肝細胞癌(以下,肝癌)の病因として多くの因子が推定されているが,肝癌と肝硬変との関連が以前から認められ,肝癌の多くが肝硬変を伴っていることが明らかにされていた.
さらに,成因がウイルス肝炎と推定される肝炎後性肝硬変の肝細胞癌が高率に発生し,肝細胞癌はウイルス肝炎を背景として発生する可能性が高くなった.ウイルス肝炎のうちでも,B型肝炎ウイルス(HBV)の本態が明らかにされ,HBV持続感染と肝癌との間に疫学的,臨床的,病理学的関連性が見出され,さらに分子生物学的検討がなされ,ウイルス肝炎-肝硬変-肝癌と連続的な関連性が推定されている.HBVのDNAがHBV持続感染者(キャリア)に発生した肝癌の細胞DNAに組み込まれていることが認められ,HBVと肝癌との病因的関連性は現在のところ,主としてウイルス発癌の観点から検討がなされているといえる.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.