トピックス
抗癌剤感受性試験
阿部 定範
1
,
久保田 哲朗
1
1慶應義塾大学病院包括先進医療センター
pp.172-174
発行日 2009年2月1日
Published Date 2009/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102377
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はじめに
抗癌剤療法においては,効果がなく日常生活に影響を及ぼす副作用のみが発生し,患者のQOL(quality of life)を著しく損なう場合も少なくない.これは,“同一の臓器由来で同一の組織型を有する癌においても抗癌剤に対する感受性は異なる”という現象に由来し,抗癌剤治療には個々の患者に投与してみなければ効くかどうかわからないという弱点がある.このため,場合によっては無効な抗癌剤を投与されることによって,効果が望めないばかりか医療費および副作用のみを負担しなければならないケースも想定される.このような現状を踏まえて抗癌剤感受性試験は抗癌剤の“効く”,“効かない”を事前にチェックする抗癌剤感受性予測を目的に開発されてきた.
現在,広く行われている抗癌剤感受性試験の方法は,細胞生物学的な抗癌剤感受性試験であり,原理的には手術などで摘出した癌の組織を対象として,in vitro(試験管内)でなんらかの方法で癌細胞を生存させ,各種抗癌剤を一定期間接触させることによって癌細胞の生残率を観察する方法である.癌細胞の培養方法や判定法による違いはあるが,効果のある抗癌剤に接触した癌細胞は“死に”,効果がない抗癌剤のなかでは癌細胞は“死なない”という生物現象を主に発色によって判定する方法である.理論的には培養可能なすべての癌種を対象としうるが,現状で多く施行されている対象は消化器癌,頭頸部癌,乳癌,肺癌,婦人科腫瘍などである.
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