今月の表紙
婦人科:子宮頸部上皮内癌
星 利良
1
,
都竹 正文
1
,
坂本 穆彦
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
pp.916
発行日 1993年10月1日
Published Date 1993/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901703
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全子宮原発癌のうち圧倒的に多数を占めるのは子宮頸部扁平上皮癌である.扁平上皮癌のうち癌が上皮内にとどまり間質浸潤のないものを組織学的分類では上皮内癌(carcinoma in situ;CIS)といい,臨床病期分類では0期癌と呼ばれている.0期癌の頻度は当院産婦人科のデータによると,1960年代では子宮頸癌の約7%であったが,1992年では約60%を占めるほどの高頻度となっており,なお増加傾向にある.これは,細胞診による初期癌の発見が増えてきたことを示しており,細胞診が子宮頸癌の早期発見にいかに貢献しているかを物語るデータである.
上皮内癌の初発部位は,子宮頸部扁平-円柱上皮境界部(squamo-columnar junction;SCJ)の内側の約10mm幅の移行帯(変換帯)といわれている.この部分から,円柱上皮下の予備細胞(reserve cell)が増殖し,さらに化生変化を起こし,扁平上皮に分化していく段階で癌化が起こると考えられている.年齢分布は,40,30,50,60歳代の順に好発し,近年,発症年齢は若年化傾向を示している.また発見される平均年齢は進行癌と上皮内癌では約10年の差がある.上皮内癌は無症状のことが多く,癌検診などで偶然発見されることが多い.腟拡大鏡(colposcopy)検査では,赤点斑,白色上皮・モザイクなどの異型移行帯を認める.予後は良好で,適切な処置により完治が期待できる.
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