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はじめに
HPV(human papilloma virus,ヒト乳頭腫ウイルス)が子宮頸癌の発癌過程に深く関与していることは,今日広く受け入れられている.特に前癌病変においては,細胞診でHPV感染を診断することが可能である.koilocyte,parakeratocyte(dyskeratocyte),smudged nucleus,giant cell,二核あるいは多核細胞の出現をもって細胞診断がなされている.
HPVにはおよそ100種類があり,うち子宮頸癌と特に関係があるとされるタイプは16,18,33,52,58型であり,これらのタイプが前癌病変で確認された場合は厳密な臨床管理,フォローアップが必要である.HPVは前癌病変の90~95%に確認されている.尖形コンジローマからはHPV6,11型が確認されているが,このタイプのHPV型は発癌には関与しないとされている.図1に見られる腟壁の白色の隆起性病変(矢印(1))および子宮腟部の白色上皮層(矢印(2))が尖形コンジローマの病変で,いわゆるSTD(sexulally transmitted disease,性行為感染症)として臨床的に扱われる.この病変からは癌化しない.治療はレーザー蒸散術,凍結療法や抗DNA療法などが考慮される.
子宮頸癌および前癌病変と関係があるとされるタイプにはHPV-DNAの16,18,33,52,58型があり,それを証明したものが図2,3である.図2は子宮頸部に発生した中等度異形成であるが,ヘマトキシリン-エオジン染色(hemato-xylin-eosin stain,HE染色)での組織像ではHPVの感染の証拠を見いだすことは困難である.図3は同様の組織にHPV-DNA(16,18型)を証明するためのin situ hybridization(ISH)法を施行したもので,異形成由来細胞の核はHPV-DNAに置換され黒く染まって見える.したがって,HPV感染の事実が明らかである.HPVの検出にはこの他にサザンブロット法(Southern blotting),PCR(polymerase chain reaction,ポリメラーゼ連鎖反応法)などの分子生物学的手法がある.
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