連載 臨床医からの質問に答える
血栓止血系の分子マーカーの使い分けについて質問された
島津 千里
1
1帝京大学医学部附属病院中央検査部
pp.384-389
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100406
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血栓止血系マーカーは播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)診断基準の補助診断項目に採用されており,DICの診断や治療効果・予後判定に有用である.近年,膝・股関節置換術後など術後合併症として深部静脈血栓症/肺塞栓症(以下,血栓症)の増加に関連して,2004年には関連学会より“深部静脈血栓症/肺塞栓症予防ガイドライン”が作成された.死因の上位を占める心筋梗塞や脳梗塞などは動脈硬化を基盤として,血管壁の炎症性変化,細胞増殖などに起因する血栓形成とともに発症する.血管内皮細胞傷害・活性化の程度を知ることは重要であり,血栓症発症のリスクや予知,抗血栓療法のモニターとしての有用性も期待される.
生体内では凝固・線溶活性化の結果,トロンビン,プラスミンが生成されるとただちに阻止因子との複合体が形成される.血中では阻止因子のほうがはるかに多量に存在するため,複合体の定量は血管内での凝固・線溶活性化の程度を知る指標となる.トロンビン生成の過剰を捉える凝固系,プラスミン生成の過剰を捉える線溶系ならびに血管内皮細胞活性化・障害の各種マーカーのバランスにより血栓傾向を把握できる1).
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