わだい
骨髄腫とサイトカイン
加納 正
1
Tadashi KANOH
1
1京大・第1内科
pp.1476-1477
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917642
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リンパ球,マクロファージは生物活性を有する液性因子を多数産生・分泌し,免疫応答の調節を行っている.これらの因子の産生・分泌には,リンパ球,マクロファージ以外の細胞(多核白血球,線維芽細胞,上皮細胞など)も参加していることが明らかとなり,これらはサイトカイン(cytokine)と総称されている.
骨髄腫(形質細胞腫)はB細胞系腫瘍の一つで,骨髄腫細胞は免疫グロブリン(単クローン性,M成分)を産生・分泌する.免疫グロブリンも一種のサイトカインと考えられるが,これよりもはるかに微量の種々のサイトカインが骨髄腫細胞によって産生・分泌されていることが明らかになった.さらに,一部のサイトカインについては,その受容体(レセプター)が細胞膜上に表現されている.受容体を介して,骨髄腫細胞は骨髄腫細胞自身あるいは別の細胞から分泌されるサイトカインと反応する.このようなサイトカインの関与する反応の解析を通じて,骨髄腫の生物学に光が当てられつつある.その成果は,骨髄腫細胞の増殖様式,骨髄腫の臨床像,さらに治療について,新しい視点を提供している.
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