技術解説
セルローズアセテート膜による血清タンパク質電気泳動法の検討
小沼 正哉
1
,
真砂 佳子
1
KONUMA MASAYA
1
,
MASAGO KEIKO
1
1日本鋼管病院横浜地区健康管理科
pp.455-460
発行日 1964年6月15日
Published Date 1964/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916774
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はじめに
血清タンパク質の変動は種々の疾患に関連があることは周知であるが,各種血清タンパク質の定量分析を実施することは容易でなかった。1900年ごろHardyがタンパク質の泳動現象に着目。1937年Tiselius1)がその泳動現象を自由溶液中でとらえ,血清タンパクの分析法に飛躍的な改良を加えた装置を発表し注目をあびた。しかし操作に難があり,研究室外の一般臨床機関で採用することは困難であった。
その後濾紙上を泳動せるタンパク質に色素を結合させ分離定量を行なう濾紙電気泳動法が行なわれるようになった。これはTiseliusの電気泳動法に比し検体が少量でよく,操作が比較的簡単などの特徴があるが,泳動に比較的長時間を必要とし,集団的処理が困難なことから,健康管理などのごとき多人数の集団を対象に実施することはほとんど考慮されていなかった。しかしてKohn2)3)により開発されたセルローズアセテート膜を支持体とする電気泳動法は,春日ら4),小川5)6),島尾7)により検討報告されたごとく,従来の濾紙による電気泳動法と比べ,検体や色素の吸着が少なく,分離が明確であり,かつ泳動時間が短く,必要面積が少なくて済むということで,多検体の処理がきわめて容易となった。ために今後はセルローズアセテート膜が濾紙にかわって広く採用されることとなろう。そこで健康管理などの集団的利用に先立ち,この方法の種々なる問題点を検討してみたので報告する。
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