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免疫電気泳動法は,抗原分析,とくに血清タンパク分析の分野において,Tiselius,デンプン,濾紙電気泳動法では到達しえない細部までの分析を可能ならしめた。電気泳動法に抗原抗体反応の特異性を組合せたこの巧妙な方法は,ひとり基礎医学の分野のみならず,臨床面にも,更にタンパク化学の分野,ひろく生物学全般の分野にも応用されて,すぐれた成績をもたらしている。この方法を応用するにあたっての第一のカギは,よい抗血清を用いることであり,抗原の単一性とか,ある特定のタンパクの欠如や異常とかを論ずる場合には,抗血清が不充分なものであると結果の解釈に非常な誤りをおかすことになる。また逆に,抗血清のよしあしの判定も,免疫電気泳動法による判定なくしては決して充分とはいえない0動物を免疫して得た抗血清が,はたして目的とする抗体をふくむものかどうかは,免疫電気泳動法によらずしては決定的に判定し得ず,単なる重層法,寒天内沈降反応のみにしては,目的とする抗体と,副産物としてできた不純物に対する抗体との区別はつけ難い。したがって,よい抗血清,充分に免疫された抗血清を得ることが,免疫電気泳動法の成否のカギをにぎるもので,手技そのものはそれほどむずかしいものではなく,誰でも,濾紙電気泳動の装置,あるいは低電流の直流発生装置さえあれば手軽に行なえるものである。抗血清のつくり方については他の文献を参照していただくことにして,ここでは実施の操作に重点をおいてのべてみた。
免疫電気泳動法の支持体としては,ここ10年,寒天ゲルがもちいられていた。親水性であり,高分子物質が吸着されることなく自由に拡散でき,均一な構成分からなり,しかも入手しやすいということから好んで用いられている。最近セルローズアセテート膜がこの分野に登場してきてかなり注目をあびているので,寒天ゲルと,このセルローズアセテート膜とをもちいる免疫電気泳動法にっいて,私どもの研究室で行なっている方法を詳しく紹介しよう。
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