特集 血液検査の問題点
20 異常血色素症—その発見のために
山本 きよみ
1
,
井内 岩夫
1
1岡山・川崎病院
pp.988-997
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916558
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はじめに
異常血色素症という新しい血液疾患の分野が確立されたのは,その代表的存在である鎌状赤血性貧血症の血液中に,電気泳動的に正常血色素(HbA)とことなるHbSが含まれ,さらにHbSの異常は,Hb分子の蛋白部分であるグロビンの異常に基づくものであること,またこの異常血色素が本症にみられる溶血性貧血(溶血発作),激痛発作,再生不良性貧血発作などの諸症状の根本原因であることを解明した,Pauling1)およびIngram2)らの画期的業績に負うものである。以来,同様の研究が世界各地で行なわれ,20年後の今日世界の異常血色素は,160余種にも及んでいる。
一方,わが国においては1957年以来東京・宇部・福岡・京都・岐阜・熊本・広島など全国各地において異常血色素の調査が開始され,南方地域住民のHbE3),ネグロ人のHbS1)地中海沿岸住民のサラセミア症4)など,特定地域の住民に高頻度にみられる異常血色素こそ存在しないが,今日までに表1に示すごとく約40種に及ぶ多種類の異常血色素が報告されている。
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