今月の主題 赤血球の化学
技術解説
自己免疫性溶血性貧血の検査—Coombs試験と自己抗体の誘出法
神奈木 玲児
1,2
,
上尾 八郎
3
,
稲本 キヨ
3
,
三角 香代子
3
,
野崎 康子
3
,
恒松 徳五郎
4
1京都大学病理
2免疫研究施設
3京都大学病院検査部
4京都大学第2内科
pp.631-638
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915483
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自己免疫性溶血性貧血の溶血性貧血のうちに占める比重は大きく,後天性溶血性貧血患者の大部分を占めている.本症の診断は,患者赤血球ないし血清中に自己抗体の存在を証明することにかかっている.したがって1945年にCoombsらにより再発見された抗グロブリン試験(以下Coombs試験)は,本症の診断の基礎になる重要な検査法であり,その臨床的意義と手技は確立されている.しかしCoombs試験は単に赤血球に抗体ないし補体が付着していることを示すだけで,その抗体が自己抗体であるかどうかについてはこれだけでは分からない.自己免疫性溶血性貧血を確診するためにはその抗体が自己抗体であることを証明しなければならない.この場合には患者赤血球に付着している抗体を誘出(elution)して,それが赤血球に対する抗体活性を持っているかどうかを確かめなければならない.
また近年,アルドメットやセファロスポリン系,ペニシリン系の抗生物質が頻用されるにつれて,薬剤性の免疫性溶血性貧血についての関心が高まってぎている.これら免疫性溶血性貧血の検査法について,温式自己抗体を中心に薬物抗体の検出法も併せて紹介したい.
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