特集 生検の進歩
I 臓器別生検
ii 細胞診
1 穿刺生検細胞診—1 肺
加藤 治文
1
,
伊藤 哲思
1
,
池田 徳彦
1
,
三浦 弘之
1
,
早田 義博
1
Harubumi KATO
1
,
Tetsushi ITO
1
,
Norihiko IKEDA
1
,
Hiroyuki MIURA
1
,
Yoshihiro HAYATA
1
1東京医科大学外科
pp.1284-1290
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913475
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はじめに
肺の穿刺細胞診は,肺疾患の確定診断法として非常に価値の高い検査法である.肺癌の死亡率が急速に増加している現状では,治癒率の高い肺癌,すなわち早期の肺癌を見つけ出さなくてはならない.そのために,肺癌検診の重要性が以前から叫ばれ,本年から老人保健法に肺癌検診が取り入れられることになった.その検診は,胸部X線検査と喀痰細胞診検査の二本立で行われる.喀痰細胞診は中心型早期肺癌の発見のために,胸部X線検査は末梢型早期肺癌の発見のために有効であることは,周知のとおりである.しかし,これらの検査法に確定診断上の問題点が存在することも,例外ではない.
肺癌の確定診断法には,内視鏡的な組織生検と細胞診,そして針穿刺細胞診があるが,それぞれに特色がある.病巣の生物学的動態に基づいて診断的時間,さらには経済面も考慮して,その適応検査法を選択しなければならない.せっかく早期と思われる症例が胸部X線写真上に発見されても,陰影が小さいためにX線透視下の内視鏡的検索の繰り返しによっても確定診断の得られないことがあり,そのためにdoctor's delayにつながることがある.針穿刺細胞診は,末梢の小型陰影でも高率に,しかも迅速に確定診断を得ることができるので,肺癌診断には欠かせない検査法である.また,癌のみならず最近増加しているAIDSによるカリニ肺炎の初期診断にも,穿刺細胞診は有効である.
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