特集 生検の進歩
I 臓器別生検
ii 細胞診
1 穿刺生検細胞診—3 甲状腺
島 寛人
1
,
加藤 一夫
2
,
高橋 正宜
3
Hiroto SHIMA
1
,
Kazuo KATO
2
,
Masayoshi TAKAHASHI
3
1岐阜赤十字病院検査部
2岐阜大学医学部病理学第一講座
3㈱スペシアルレファレンスラボラトリー
pp.1297-1301
発行日 1987年10月30日
Published Date 1987/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913477
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はじめに
甲状腺腫における穿刺吸引細胞診(aspiration biopsy cytology;ABC)はSöderström (1952)1)以来,多くの施設で行われ,最近では,open biopsy, Vim—Silverman針によるneedle biopsyなど,従来の生検法に代わり,重要な形態学的診断法として広く普及するに至っている.それはすなわち,甲状腺が体表から容易に触知可能な実質性臓器であり,各種画像診断法の発展に伴う甲状腺腫の質的性状の把握が容易となったことに加え,合併症が少なく安全で,手技が簡便であり,なおかつ細胞診精度が向上してきたことなどによるものである.
ABCの対象となる甲状腺疾患としては,癌,腺腫,嚢胞およびこれらの鑑別診断としての亜急性,慢性甲状腺炎などがあるが,実際においては,癌の診断における有用性が第一義的となろう.そこで本稿では,ABCの実際と,甲状腺癌,とりわけ乳頭癌,未分化癌およびそれらと鑑別を要する良性疾患とを対比させ,その判定基準となる細胞形態学的特徴について解説したい.
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