今月の主題 制癌剤と臨床検査
総説
制癌剤の検査データへの干渉
荒木 英爾
1
Eiji ARAKI
1
1国立がんセンター病院臨床検査部
pp.1067-1074
発行日 1987年10月15日
Published Date 1987/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913426
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◆はじめに
制癌剤は主として外科療法,放射線療法などと併用して癌の治療に用いられ,特に白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,絨毛上皮腫,Wilms腎腫瘍などでは重要な治療法になっている.その他の癌では制癌剤投与により完全治癒がみられることもあるが,奏効率は一般に低く,厳密な判定基準を適用すると10〜20%程度のことが多い.しかし,それも近年の新薬剤の開発,投与法の進歩に伴って大幅に改善されつつある.
制癌剤の作用は,核酸合成の各段階の反応を阻害するもの,あるいはDNAに作用してDNA鎖を切断,あるいは損傷させて,DNAを鋳型とするRNAあるいはDNA合成を阻害するものが多い1).したがって,分裂増殖の盛んな癌細胞にもっとも強力に作用するが,分裂の盛んな正常細胞からなる骨髄,腸粘膜,皮膚毛根,抗体産生細胞などにも作用し,白血球減少,胃腸出血,脱毛,免疫抑制などが発現する2).
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