今月の主題 医用センサー
センサー
振動センサー—人工中耳用トランスデューサーについて
暁 清文
1
Kiyofumi GYO
1
1愛媛大学医学部耳鼻咽喉科
pp.1032-1036
発行日 1985年9月15日
Published Date 1985/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912664
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1.はじめに
耳科において振動センサーを使用する主な目的は,鼓膜や耳小骨の微小振動を測定するためである.従来よりこの目的には,キャパシタンス・プローブやホログラフィー,顕微鏡+ストロボ照明などが用いられてきたが,最近ではレーザーDoppler振動計が開発され,0.1nm単位の測定が可能となっている.しかしながら,これらの装置を用いたとしても,生体での測定にはなお制約が多く,さらに新しい測定技術の開発が望まれている.
ところで,ここで述べる人工中耳用トランスデューサーは,上記のような振動の測定を目的とするセンサーではない.人工中耳は原理的には空気の振動をピックアップし,それを直接内耳に伝える装置であり,生体内に植え込まれて中耳の機能を代行するものである.このため人工中耳用のトランスデューサーの開発に当たっては,生体への植え込みを前提としているので構造自体には新しいものを求めず確立された既存の方式を用い,むしろ小型化や高性能化,耐久性に主眼を置いて研究開発されている.以下,人工中耳の概要を述べるとともに,その入出力トランスデューサーであるマイクロホンと振動子の構造,作動原理,性能について解説する.
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