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臨床検査においては,血液などの検体の分析から多くの情報を得ているが,血圧,血流,呼吸,体温などの生理機能に関する情報は,センサーを身体に装着して計測しなければならない.また,検体から得られる情報も,身体に装着したセンサーによつて計測できるようになれば,動的変化を追跡することができ,さらに無侵襲に計測できれば患者の苦痛や危険が避けられる.圧力や温度のような物理量と比べると,物質濃度のような化学量の計測用のセンサーの開発は遅れているが,それでも血液ガスの経皮的計測が行われるようになるなど,実用段階に入ってきたものもある.
センサーは身体の感覚受容器に対応するものであり,感覚受容器は対象とする物理量,化学量を神経インパルス信号に変換する働きをしているのに対応して,センサーは物理量,化学量を電気信号に変換する.神経インパルスも電気現象であるが,生体内の電気現象が電解質中のイオンの移動であるのに対して,センサーはエレクトロニクス装置の入力に信号を送ることができるように,金属導体中の電子の流れに変換するものであり,原理的に感覚受容器と異なっている.信号をエレクトロニクス装置に送ることができれば,記録や表示が容易にでき,またコンピューターに接続して情報の処理を行うこともできる.これらのエレクトロニクス装置としては,一般に使われている汎用の装置を使うことができるが,生体から情報を抽出するセンサーは,対象量および使用条件に適したものが必要となり,いろいろなセンサーを用意しなければならない.実際,医用センサーは種類が多く,それぞれに特殊な技術が用いられるので系統的に理解することは難しいが,ここではいくつかの例について,最近の注目されている技術を紹介する.
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