第5回医学書院臨床検査セミナーより・1【新連載】
病理形態検査の課題をめぐって
高橋 正宜
1
1岐阜大学医学部病理学教室
pp.1632-1634
発行日 1984年11月15日
Published Date 1984/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912423
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はじめに
今回臨床検査セミナーに,このような課題を掲げました理由を最初にお話ししましょう.
形態検査といいますのは経験に基づく判別を基盤とする学問ですから,判定には検者による変動はもちろん,日による変動もあるかと思います.形態検査ではなかなかquality controlを行うことが難しいのですが,結果の明らかな,また検出されるべき細胞の所在も明らかな標本を日常の染色標本の中に入れ込む方法があります.特に第一次スクリーニングをする細胞診の偽陰性(false negative)を避けるために,信頼度のチェックは必要なことです.この方法はまだ認定試験を経ない方と指導的な技師の方も参加して施行したところ,経験の深い方が必ずしもいい判定をしなかったり,見落としをしたりすることがありました.つまり,dou-ble checkのsenior cytologistはつねに問題となる細胞の評価のみが仕事となって,第一次スクリーニングの精度を落としていることがあるのですね.一方,国際会議でよく行われる自己採点法は20問ぐらいの症例を判定する実力試験で,自らの判別力を試すやりかたで,学力テストのような方式でいずれも有用性があります.生検組織診においてもdysplasiaのgrade分類が軽度と中等度と同一例で日によって変更されることもあるように,形態学ではなんらかの客観的解析法が導入される必要があろうかと思われます.
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