検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
時間による尿中細胞の形態学的変化
藤井 雅彦
1
,
高橋 正宜
2
1東京都がん検診センター臨床検査部
2岐阜大学医学部第1病理学教室
pp.883-886
発行日 1983年10月1日
Published Date 1983/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202868
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膀胱癌の多くは,膀胱鏡検査によって比較的容易に診断することが可能であり,また,確定診断のための生検も経尿道的に行うことができる.しかし,早期発見,追跡検査を目的としたスクリーニングテストには患者にまったく負担を与えず,検体の採取が非常に容易な尿細胞診が有用である.さらに,内視鏡的に不明瞭な非乳頭状の膀胱癌,および腎盂,尿管など上部尿路の腫瘍の診断にも尿細胞診の価値は高い.
尿中に剥離した細胞を観察して,癌か否かを診断する試みはすでに19世紀の末に行われていたが,尿細胞診が広く用いられるようになってきたのは,1945年のPapanicolaouとMarshallの報告1)以来である.特に,1950年代のイギリスでは,アニリン系色素工場の労働者に発生した職業性膀胱癌の早期発見に,尿細胞診がきわめて効力を発揮した2).
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