特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
6.環境とアレルギー
1)アレルギー疾患と環境抗原
工藤 誠
1
Makoto KUDO
1
1神奈川県立循環呼吸器病センター呼吸器科
pp.1351-1356
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904230
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はじめに
近年,アレルギー疾患の罹患率が増加し,厚生省統計によると,この20年間で約3倍となっている.現在では,スギ花紛症が人口の10%強,成人気管支喘息で3%,小児喘息で5%にも増加し,欧米でも同様の増加がある.この要因は産業革命以降の都市化,人口集中,農業の近代化,生活様式の変化に帰着するとされている.
アレルギー疾患の原因はアレルゲンであり,環境中のあらゆる物質が原因となり得る.実際,スギ花紛症のここ20年の爆発的な増加の一因には,戦後復興に際し木材不足のための大規模な森林の伐採とその後のスギの大量植林が挙げられる.アレルギー疾患では発症,増悪になんらかのアレルゲンの存在があり,臨床上診断,治療に対してアレルゲンの同定は最も重要である.現在,アレルギー疾患の治療において抗アレルギー薬やステロイド剤などが重要視されているが,治療の中心がアレルゲンの除去であることは疑う余地はない.
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