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第42回日本医真菌学会総会(順天堂大学医学部総合診療科渡辺一功会長)が1998年10月25日,26日の2日間にわたり,砂防会館と全共連ビル(東京部千代田区)を会場として開催された.1998年は医真菌学にとって,ややインパクトに欠ける,谷間の年であったかも知れない.しかしその一方で,真菌症対策への関心と臨床的要請は日々高まっており,よた水面下では次世代に向けたさまざまな研究開発と実用化体制の確立も計られている.このような状況下,学会は医真菌学の新たな展開を模索する内容となったように思われる.その中で,将来的に臨床検査上下トピックスとなり得る演題のいくつかを紹介したい.
学会の企画演題としては,①教育講演:"抗真菌剤の耐性機構",②シンポジウム:"Malassezia fur-frur-最近の話題","抗真菌薬の現状と展望",③ランチョンセミナー:"医真菌研究の新たな視点","血清で診る深在性真菌症","New Trends in the Treat-ment of Onychomycosis","皮膚真菌症と免疫反応"が用意された.シンポジウムで取り上げられたMalassezia furfrurは,従来癜風(しろなまず,くろなまず)と呼ばれる皮膚真菌症の起因菌としてのみ知られていた脂質要求性の担子菌系酵母である.ところが今日,本菌の病原性は,脂漏性皮膚炎(ふけ症を含む),毛嚢炎,アトピー性皮膚炎に及び,海外においては,新生児敗血症の起因菌としても注目されている.しかし,本菌は通常検査室で使用する培地単独では培養が不能であるため,一般の微生物検査室では培養同定がなされていない.演題では本菌の分子生物学的同定,および各疾患に対する病因論的な役割に関して活発な議論がなされた.今後,本菌感染症の診断と検査体制の確立が必要となろう.ランチョンセミナーのテーマの1つ,"血清で診る深在性真菌症"では,現行の補助診断法として有効とされている検査法のうち,β―グルカン測定法,抗原検出法,および遺伝子診断法のいずれも,臨床的要請に答え得る検査法の要件を満たしているものの,その結果,解釈のためにはより詳細な臨床試験が必要なことが浮き彫りにされた.また,"医真菌研究の新たな視点"では,植物由来のエッセンシャルオイルを用いたユニークな抗真菌アロマテラピーが報告され,話題を呼んだ.
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