特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅱ.免疫
4.神経疾患と自己抗体
3)神経筋接合部疾患
本村 政勝
1
,
中尾 洋子
1
Masakatsu MOTOMURA
1
,
Yoko NAKAO
1
1長崎大学医学部第1内科
pp.1344-1347
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903493
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はじめに
神経筋接合部疾患の代表である重症筋無力症(myasthenia gravis;MG)およびLambert-Eaton筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome;LEMS)を取り上げる.両者とも,自己抗体によって発症する疾患である.MGの標的抗原は,筋肉側のアセチルコリン受容体(acetylcholine receptor;AChR)で,それに対する自己抗体が病気を引き起こしていることが既に証明されている.つまり,自己抗体病の次の3条件を満たしている1).①MG患者の免疫グロブリンを動物に投与すると,MGと同じ病態が成立する(疾患移送).②血中の抗AChR抗体が80%以上の高い陽性率を示す.③シビレエイや電気ウナギの発電器官から抽出精製したAChRを動物に免疫し,MGモデルが作製される.
一方,LEMSは,MGと同様に免疫グロブリンによる疾患移送は証明されているが2),その標的抗原はまだ確定していない.最近,神経筋接合部のアセチルコリンの放出を抑制する神経毒ω-conotoxin MVIICを用いて,電位依存性カルシウムチャネル(voltage-gated calcium channel;VGCC)抗体測定法が報告された3,4).その結果,LEMS患者の血中で,80%以上に抗P/Q型VGCC抗体が検出される.よって,P/Q型VGCCを標的とする自己抗体の病原的意義が強く示唆されている.本稿では,MGとLEMSの臨床像と自己抗体を対比させながら説明し,それぞれの発症機序を概説する.
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