特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅲ.神経生理
1.筋電図・神経伝導検査
2)神経筋接合部機能検査
上坂 義和
1
Yoshikazu UESAKA
1
1虎の門病院神経内科
pp.1363-1367
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903499
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神経筋接合部の生理機構
神経筋接合部の基本的な生理機構を述べる.シナプス前終末にはアセチルコリンを含む小胞が多数存在する.安静時には小胞の一部からアセチルコリンが放出され,シナプス後電位にわずかな脱分極が起こる.この微小終板電位では臨界値に達しないため筋活動電位の発生には至らない.これに対し運動神経活動電位が軸索終末に達すると,電位依存性のCa2+チャンネルが開きCa2+イオンが軸索内に流入する.この結果,小胞と神経膜との結合が促進し,多数の小胞からアセチルコリンがシナプス間隙に放出される.シナプス間隙に放出されたアセチルコリンは受容体と結合し微小終板電位を生ずる.これが加重し終板電位が生ずる.そして,終板電位が脱分極の臨界レベルに達すると,全か無かの法則に従い,常に同一の筋活動電位が誘発される.
アセチルコリン放出量はシナプス前膜の放出用小胞の数と軸索終末のCa2+イオン濃度に依存する1).神経終末に反復刺激を加えると相反する2つの過程が働くことになる.第1には先行する刺激が放出用量子を消費するため,次の刺激では直ちに利用できるアセチルコリン小胞の数が減少する.第2にはアセチルコリン放出後軸索終末のCa2+濃度は約100~200msというややゆっくりとした時間経過で元のレベルに復するため,これより速い間隔で次の刺激が加わると神経終末でのCa2+濃度が増加し,アセチルコリンの放出量が増加する.この両者の総合的効果により神経筋接合部の検査の結果が決まってくる.
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