特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅱ.免疫
4.神経疾患と自己抗体
4)傍腫瘍性神経症候群
犬塚 貴
1
Takashi INUZUKA
1
1新潟大学脳研究所神経内科
pp.1348-1352
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903494
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はじめに
悪性腫瘍,特に肺癌,乳癌,婦人科癌,悪性リンパ腫などの患者に,比較的急速に四肢の感覚障害,強いふらつき,意識障害,易疲労性など種々の神経症状が生じることがある.多くの場合,腫瘍の神経系への直接的な浸潤・圧迫,転移,さらには栄養・代謝障害,血管障害,感染,腫瘍産性ホルモンの作用,各種治療による副作用などが原因と考えられて検査が行われるが,証拠となる所見がつかまらない場合がある.
一方で悪性腫瘍の治療によって神経症状が消失したり,患者の血清および髄液中に腫瘍と神経細胞の双方と反応する特徴的な抗神経抗体が検出される症例の報告がある.このような症例は,腫瘍のいわゆる"遠隔効果"が免疫学的機序を介して神経系に及んだと考えられ,傍腫瘍性神経症候群として注目されている1).抗体が神経細胞と腫瘍の双方と反応することから,抗体による神経細胞障害機序や腫瘍抑制へのかかわりに興味が持たれている.また,神経症状は腫瘍の発見に先行することが多いので,抗体は本症の診断のみならず,悪性腫瘍のマーカーとしても臨床的にきわめて有用である.なお,Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)については前項参照のこと.
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