特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
1.血小板の検査
6)ずり応力凝集能
小田 淳
1
Atsushi ODA
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.81-83
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903084
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ずり応力惹起血小板凝集(shear-induced Platelet aggregation;SIPA)の概念と測定意義
血栓症は動脈系に生じるか,静脈系に生じるかによってかなり様相が異なる.動脈では,血栓形成の際,中心となるのが血小板であり,血小板は無色であるので,いわゆる白色血栓が生じる.例えば突然死の一部,心筋梗塞などは,粥状硬化巣の脆い部分に血流の影響などで亀裂が生じ(ulceration),そこに血栓が形成され,冠動脈の閉塞をもたらすことにより発症するものと考えられてきている.このような場合,血小板やその凝集塊は狭窄した動脈内で速い血流に曝されることとなる.この血流は,血管断面上において一定ではなく,血管中央で最大であり,血管壁の部分が速度0に近いため,速度勾配が生じる.血流速度の異なる部分の間に存在する血小板やその凝集塊には,速度勾配のため,これらを歪ませて,引きちぎろうとする力=ずり応力(shear force)が作用することとなる.最近の動物モデルを用いた詳細な研究では58±8%の5mm長の冠動脈狭窄を生じさせた際,最高のずり応力は最狭窄部の直前で認められ,それは520から3,349dyn/cm2にも達し,血栓は狭窄部の入口から1mmの地点から形成される1).この程度のずり応力ともなると5msec程度の極めて短時間でも血小板活性化されることが知られている.
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