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第1土曜特集 分子基盤に基づくメカノバイオロジーの臨床応用最前線
メカノセンシングの分子基盤と疾患
ずり応力センシングと疾患
Shear stress sensing and vascular diseases
山本 希美子
1
Kimiko YAMAMOTO
1
1東京大学大学院医学系研究科システム生理学
キーワード:
血管内皮細胞
,
メカノセンシング
,
流れずり応力
,
層流
,
乱流
,
ミトコンドリア
,
細胞形質膜
Keyword:
血管内皮細胞
,
メカノセンシング
,
流れずり応力
,
層流
,
乱流
,
ミトコンドリア
,
細胞形質膜
pp.888-895
発行日 2025年9月6日
Published Date 2025/9/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294100888
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血管の内面を覆う血管内皮細胞(以下,内皮細胞)は,血流に起因する流れずり応力(以下,ずり応力)や血圧によって生じる伸展張力などの血行力学因子に常に曝されている.内皮細胞は,ずり応力や伸展張力などの機械的な力の変化を感知(メカノセンシング)し,細胞内の生化学的シグナルに変換し,細胞内部へ伝達(メカノトランスダクション)することにより,細胞の形態や機能,遺伝子発現の変化を伴う応答を引き起こす.ずり応力には,層流と乱流という2つの異なる血流パターンがある.層流は一方向のまっすぐな血管で起こるが,方向や速度が不安定な乱れた流れは,血管の曲がり角や分岐部の特定の領域で起こる.層流に対する内皮細胞の応答は,心血管系の形態や恒常性の維持に寄与する一方で,乱流に対する応答は内皮細胞の機能障害,動脈瘤や粥状動脈硬化症などの血管疾患の発症につながることが示されている.力学的刺激をどのように内皮細胞膜がセンシングし,その変化を細胞内の生化学的なシグナルに変換するのか,特にずり応力と伸展張力,層流と乱流を区別するメカノセンサーの本体と,その感知メカニズムは議論が盛んになされている.本稿では,内皮細胞のずり応力センシングにおいて細胞形質膜やミトコンドリア膜が果たす役割と,血管疾患に及ぼす影響について議論する.

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