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ずり応力惹起血小板凝集
横山 健次
1
,
池田 康夫
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.697-699
発行日 1997年7月1日
Published Date 1997/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903194
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はじめに
流れに沿ったある面を考えるとき,上方の流れの速い部分は下方の遅い部分に対して流れの方向に引きずっていく力を及ぼし,一方,下方では引き離されるような力が働く.このとき速度勾配をずり速度(shear rate),ある面にかかる力をずり応力(shear stress)と呼ぶ.血管内での血液の流れは速度勾配を持つ定常流とみなされており,血液が流れる際に血球細胞はずり応力にさらされる.詳しい情報は乏しいが,正常の動脈内では数〜数十dyn/cm2のずり応力がかかるとされており,動脈硬化などにより病的に狭窄した細動脈では数百dyn/cm2のずり応力が発生すると考えられている.さらに心臓人工弁置換術後の弁輪でのleakが発生した場合には1,000dyn/cm2のずり応力が発生するとされている.血小板にこれらのずり応力がかかることにより,アゴニスト非存在下に血小板が凝集することが知られており,ずり応力惹起血小板凝集(shear stress-induced platelet aggregation;SIPA)と呼ばれ,生体内での病的動脈血栓形成と深い関連を有していると考えられ注目されている.
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