特集 ホルモンと生理活性物質
総論
3.ホルモン,神経伝達物質のシグナル伝達機構
神﨑 展
1
,
小島 至
1
Makoto KANZAKI
1
,
Itaru KOJIMA
1
1群馬大学生体調節研究所調節機構研究部門
pp.25-30
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902165
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はじめに
非常に多くの細胞からなる生体は,互いに絶えず細胞間で情報を交換している.複雑な生命現象を円滑に行っていくために,この情報を正確に受容し,細胞内に伝達するシステムが必要である.ホルモン,神経伝達物質,サイトカイン,細胞増殖因子などが情報物質として産生・分泌され,標的細胞にその情報を伝えている.これらの情報物質は,その受容体が細胞膜に存在するものと細胞内に存在するものに大別できる.
脂溶性であるステロイドホルモン,甲状腺ホルモン,ビタミンA,ビタミンD3などは細胞膜を透過して,細胞内に存在する受容体に結合する.そのほかの多くの情報物質は細胞表面に存在する受容体に結合して細胞内情報伝達物質(セカンドメッセンジャー)を産生する.そして,細胞はあらかじめプログラムされたさまざまな反応を惹起し,最終的に生物学的効果が引き起こされる1).このSotherlandにより提唱されたセカンドメッセンジャー説は,cAMPを増加させるホルモンにおいて確立されたものである.一方,アゴニストの中にはcAMPは増加させずに作用を発揮するものがあるが,これらは多くはカルシウムイオン(Ca2+)をセカンドメッセンジャーとしている.
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