特集 現代医学・生物学の仮説・学説
4.シグナル伝達系
シグナル伝達
小島 至
1
1群馬大学内分泌研究所細胞制御部門
pp.510-513
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900626
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概説
ホルモン,神経伝達物質,増殖因子,サイトカインなど細胞間のコミュニケーションに関与する情報物質は,標的細胞に存在する受容体(レセプター)に結合することにより自身のもつ情報を細胞内へと伝達する。これらの受容体の多くは細胞膜に存在し,細胞外からの情報は受容体の存在する細胞膜内で変換され,その結果細胞内に新たなシグナルが産生される。この細胞内シグナル物質(セカンドメッセンジャー)が蛋白燐酸化などさまざまな反応を引き起こし,細胞応答が惹起される1)。このSotherlandにより提唱されたセカンドメッセンジャー説は,サイクリックAMP(cAMP)を増加させるホルモンにおいて確立されたものである。その後の検討から,アゴニストが受容体に結合するとそのシグナルはGTP結合蛋白(G蛋白)に伝達され,情報はそこで増幅され,アデニル酸シクラーゼが活性化され,cAMPが産生されることが明らかにされた(図1)。やがてホルモンの中には逆にcAMPを減少させるものもあることが知られ,その場合にはアデニル酸シクラーゼを抑制するG蛋白が活性化されることが明らかにされた。現在ではアデニル酸シクラーゼを活性化させるG蛋白はGs,逆に抑制するG蛋白はG1とよばれる。
一方,アゴニストの中にはcAMPは増加させずに作用を発揮するものがあるが,これらの多くはカルシウムイオン(Ca2+)をセカンドメッセンジャーとしている。
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