学会だより 第8回国際ウイルス肝炎・肝疾患会議
MoleculesからMore curesへ
三代 俊治
1
1特殊免疫研究所
pp.833
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901624
- 有料閲覧
- 文献概要
1.盛会の理由
アジアで初めて開かれた国際ウイルス肝炎・肝疾患会議(名誉会長織田敏次,会長西岡久壽彌,副会長鈴木宏:5月10~14日,東京)は,58か国から1,400名弱の参加者を集め,実に"3年に一度のオリンピック"に相応しいにぎわしさがあった.なぜこうも多数の人々が,折しも吹き始めた円高の逆風を突いてまで極東の地に飛来したのだろう.前回1990年のヒューストン会議の会長Hollingerが"3 YEARS AFTER 1990"でいわく,この3年間における肝炎研究の"伸び"は目覚ましく,特にC型肝炎に関するそれは文献数にして約倍増の勢いである,と.実際,今回の会議に寄せられた抄録は総数で前回を上回り(850:前回は600),かつその約半数がHCVに関連していた.
既知5種類の肝炎ウイルス(HAV,HBV,HCV,HDV,HEV)については,ウイルス遺伝子の塩基配列が全部わかり,分子生物学的な研究が着々と進展しつつある.しかし,それだけでは人は来なかっただろう.Moleculeについての知識が,病気の予防・治療に応用され始めたからこそ,あるいはそれを期待したからこそ,人は来た."ウイルス肝炎根絶"の日に向けて,今回の東京会議は,MoleculesからMore curesに向けて踏み出した最初の確かな足取りの1つとして位置づけられる.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.