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今回の特集は多発性骨髄腫と類縁疾患についてです.Mタンパク,骨髄像など臨床検査が活躍する疾患です.Mタンパクは電気泳動で同定されますが,残念なことに院内で実施している施設は少なくなってきています.それでも総タンパクとアルブミンの乖離から十分疑うことができますので,基本的なこの2つの検査には注意したいところです.また,Mタンパクの存在がさまざまな検査に影響することがあり,そのことがMタンパクを疑うきっかけにもなりますので心しておきましょう.Mタンパクにより思わぬ検査データが出ることはいわゆるピットフォールの1つです.日本臨床化学会では,ピットフォール研究専門員会を組織し,事例を集めるとともに,そのような経験をした際の解決法をアドバイスまたは,共同でその機序を研究する活動を行っています.お困りの事例に遭遇したらぜひ相談してください.
私がこの世界に入ったとき,私の興味を理解された恩師から,日本電気泳動学会に入会して勉強するよう勧められました.そのような名前の学会があるのは驚きでしたが,電気泳動を使って研究する基礎科学から臨床検査分野まで多くの分野を網羅するユニークで格調の高い学会と知り,毎年勉強に出掛けました.当時は院内でタンパク分画やアイソザイム検査を行っている施設が多かったので,学術集会では臨床検査部門からの発表が一大勢力を占めていました.アイソザイム検査により見いだされた酵素結合免疫グロブリン(マクロ酵素)の知見は,この学会で多く蓄積されました.先に述べた,ピットフォールの原因解析でMタンパクに行き当たった,などという発表も多く見受けられました.ただ,時は流れ,タンパク分析ではプロテオミクスの技術が導入され,遺伝子核酸の分析が盛んになってくると,臨床検査分野からの発表は徐々に減り,従来の電気泳動検査が外注化される傾向にあったことも拍車を掛け,学会のなかでの臨床検査分野の活動はかなりの少数派になってしまいました.そういう私も,ある時期から幽霊会員になっていました.ところが,最近少しお手伝いをさせていただいたことがきっかけで,臨床検査分野の活動をなんとか活性化してほしいとご相談を受け,同志の方々と思案しているところです.ご協力ぜひお願いします.
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