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二次的所見
がんゲノム医療において,解析対象にはなっているが本来の検査目的(一時的所見)ではない所見であり,特に生殖細胞系列に病的と確定できる遺伝子変異(本稿では,以下バリアント)が検出されることを二次的所見(secondary findings)と呼ぶ.従来は“偶発的所見(incidental findings)・二次的所見”と記載されることが多かったが,「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言」1)において,“偶発的所見”という用語は,あくまでも解析対象であることの意識が薄れる懸念があり,所見が発生したときの対応が後手に回ることにもつながる可能性があることから,本来の検査目的である“一次的所見”と本来の目的ではないが解析対象となっている遺伝子の“二次的所見”に分けて呼ぶことが提唱された.特にがんゲノム医療におけるがん遺伝子パネル検査(数百の遺伝子を同時に解析する検査)では,検査前から解析対象の遺伝子が決まっているため“二次的”という言葉もふさわしくないとも考えられるが,本稿では二次的所見と呼ぶこととする.
現在の医療において二次的所見が見いだされる可能性のある遺伝子検査は,がんゲノム医療(がんの治療のために,がん細胞における体細胞バリアントを検出することを目的とする)と,難病などの診断や治療のために行われる生殖細胞系列の全ゲノム解析や全エクソーム解析が想定される.難病などにおける全ゲノム解析や全エクソーム解析においては,診断目的としていた疾患とは別の病的と確定できるバリアントがみつかることが二次的所見とされる.一方,がんゲノム医療におけるがん遺伝子パネル検査では,最適な治療(分子標的治療薬など)に結び付くようながん細胞のみで起こっている後天的なバリアントがみつかることが一次的所見にあたるが,それ以外に,例えば生まれもった体質として生殖細胞系列に病的バリアントが疑われ,遺伝性腫瘍の可能性があるとわかることが二次的所見ということになる.
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