元外科医のつぶやき・17
病理結果を知る
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.572
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200829
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前立腺癌切除術後41日目の外来では病理結果が未報告であり,術後4カ月の再診日をじっと待っていた.しかしながら,ことが自分の生命予後を左右するため不安に駆られて,焦る気持ちを抑えがたかった.現代は電子カルテが導入されており,病院の職員であれば容易に閲覧することができる.そこで,犯罪行為にはなるが,友人を介して病理結果を知りたいとさえ思っていた.しかし,思わぬ所から知ることになった.
子どもらが小さい頃は,多額の掛け捨て保険に加入していた(実際の所は,妻に強制的に加入させられていた).しかし,子どもらが独立した現在は,職場の団体生命保険にのみ加入していた.今回,少額ながらも入院・手術給付金を受け取れることを知り,病院に医療証明書の作成を依頼した.手術から2カ月後に,病院から証明書ができたとの連絡を受けた.受け取った証明書には,病名欄に前立腺癌,そして病理診断欄にはpT2c, pN0, cM0, stageⅡと明確に記載されていた.すなわち,病理学的には,前立腺癌は前立腺にのみ限局し,被膜浸潤やリンパ節転移は認めなかったのである.想定していた病期のうちでは最も望ましい段階に,心から喝采した.
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