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梅雨明け直後の少し涼しかった夏はいよいよ本番となり,連日35℃超の猛暑が続いております.原子力発電所の稼働停止に伴う電力節減の必要性から,室内の冷房は28℃に抑えられており,また夜間の冷房についても,極力夜の活動を控え,不必要な冷房の使用を避けることが求められています.おかげさまで,東京の都心ではいわゆるヒートアイランド現象がいくらか和らぎ,夜から朝にかけては,窓を開けて外の風を入れさえすれば,冷房をつけなくても,何とか過ごせるような環境になって参りました(もっともセキュリティー上は,窓を開け放して安心して眠れるような,のんびりとした世の中というわけではございませんが……).10年前の電力使用量に戻れば,原発による電力を当てにしなくてもやっていけるというのですから,この10年間で私たちがいかに多くの電力を消費するようになっていたのかをつくづく感じます.10年前に電気が使えなくて不便だなどと決して思ったことはなかったのですから.便利さと快適さを追求した結果が,都市部の大きな電力消費につながってきたのかなと,都会に住む住民の一人としては,やや反省している次第であります.今後の再生可能エネルギーの利用促進と,日本国民の“少しだけ我慢”に期待したいと思います.
さて今月の主題は「カルシウム・リン・ビタミンDの再評価」です.私は小児科医ですので,カルシウム・リン・ビタミンDというと,もっぱら早期産・低出生体重児や腎不全児における骨代謝でかかわる機会が多かったのですが,カルシウム・リン・ビタミンDの関係は複雑で難しく,患者さんに対するカルシウム・リンの補充や,ビタミンDの投与量,骨代謝の評価では常に悩んでいた記憶がございます.一方で,ビタミンDは,近年骨代謝のみならず,癌や自己免疫疾患,心血管疾患との関連性についても研究が進み,その作用については,臨床上改めて注目されている物質だそうです.今回のご企画は,富山大学大学院医学薬学研究部臨床分子病態検査学講座の北島勲先生にお願いいたしましたが,基礎・臨床の現場で実際に活躍している専門家の先生方を著者に選んでいただき,わかりやすく解説していただきました.様々な分野で臨床検査医学に携わる読者の皆さまにとって,カルシウム・リン・ビタミンDの臨床的意義を理解するためにきっと役立つ内容だと思いますので,是非ご一読いただければ幸いです.(岩田 敏)
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