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1.はじめに
サイトカインは,様々の細胞から放出され細胞間相互作用を媒介する蛋白性因子で,免疫,炎症,造血などにおいて極めて重要な役割を担っている.それに共通の特徴は,①多くが糖蛋白で,②極めて微量(pg/ml~ng/ml)で効果を発揮し,③細胞表面の特異的レセプターに結合し,細胞内シグナル伝達経路を活性化し,④主として産生局所で働き,⑤多様な生理活性を有している(pleiotropy).⑥異なるサイトカインが同一の作用を有することがあり(redundancy),⑦複雑なネットワークを形成し,⑧生理的インヒビターが存在する(IL-1R antagonist etc).⑨複数のサイトカインの相互作用は相加的,相乗的,拮抗的など様々で,⑩生理作用に必須であるが,一方過剰産生された場合など病態形成にも関与する,などがある.サイトカインがヒト免疫系にとって必須の働きを果していることが,サイトカインまたはその特異的レセプター,さらにその下流のシグナル伝達因子の欠損を有する遺伝性疾患,原発性免疫不全症の存在により明らかになった.
原発性(=先天性)免疫不全症は,ヒトの免疫担当細胞の異常に起因する疾患とである.ノックアウトマウスが作成される以前は,ほとんど唯一のin vivoモデルとして免疫担当細胞,さらにはそれに発現する遺伝子の機能を明らかにすることに大きな貢献をしてきた.ノックアウトマウスが作成できるようになった後も,ヒトとマウスにおいて,同一の遺伝子異常が異なる表現型をとる例が多数あることが明らかになり,ヒトの免疫系遺伝子の機能理解のためには,原発性免疫不全症の原因遺伝子同定と病態解析の重要性がますます高まっている1).ヒトの原発性免疫不全症の原因遺伝子はこれまでに150個以上が明らかにされており,いくつかの共通の病態の免疫不全症があり,8個のグループに分類されている(表)2).
本稿では,サイトカインとそのレセプター,さらにはその下流のシグナル伝達分子の異常により発症する免疫不全症について概説する.
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