今月の表紙 帰ってきた真菌症・5
病原性接合菌
矢口 貴志
1
,
西村 和子
2
Takashi YAGUCHI
1
,
Kazuko NISHIMURA
2
1千葉大学真菌医学研究センター系統化学分野
2千葉大学
pp.522-524
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101990
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接合菌症はMucoralesに属する菌種が原因となるムーコル症とEntomophthoralesに属する菌種が原因となるエントモフトラ症に分けられる.エントモフトラ症の感染部位は鼻粘膜と皮下組織にほぼ限られ,また,わが国では熱帯,亜熱帯に発生する本症の症例はない.これに対して,ムーコル症は日和見感染として発生する重篤な感染症で,接合菌症の大半を占め,肺,鼻,皮膚などが侵される.病原性接合菌類はいずれも速やかに生育し,寒天培地上でシャーレの蓋に達する毛足の長い綿毛状の集落を形成する(図1).菌糸は幅広く,有性胞子として接合胞子(図2)を形成する.属の特徴となる構造として,仮根(菌糸の一部から生じる植物の根のような構造),胞子囊,柱軸(柄が胞子囊内に突き出た部分),アポフィシス(胞子囊下部の構造)がある.無性胞子は胞子囊胞子と呼ばれ,胞子囊内に形成され,成熟すると胞子囊壁は破れ放出される.
ヒトに対する主要なムーコル症原因菌を以下に示す.
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