今月の表紙
病原大腸菌O157
巽 典之
1
,
津田 泉
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学
pp.855
発行日 1997年9月1日
Published Date 1997/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903231
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太陽の燦々と照りつける夏がくると,堺市で8,000人が感染した食中毒病原大腸菌O157事件を思い出す.筆者らの病院は堺市からわずか10km余りしか離れていないことや,堺市の臨床検査技師の方が筆者らの研究室で研究されておられることもあり,身近な問題であった.また,O157の診断と治療情報を本院医療情報部からインターネットに流してマスコミを騒がせたり,教室員の1人がカイワレ農園の環境調査に出向いたら,井戸水から真黄色な塩素反応がみられたとか,暫くの間はアレヤコレヤいろいろ大騒動が続いた.この辺の事情は臨床検査技師の方々なら十分見聞されているであろうが,流行期を迎えてO157感染症を再度復習していただくつもりで入院症例の提示を試みたしだいである.
本症は,数日の潜伏期の後,発熱・腹痛・下痢,なかでもイチゴジュース様の便が排出されるのが特徴的である.その経過中に貧血,血小板減少,そして溶血によるLDHの上昇がみられる(図a).初期には静菌性抗生物質を投与するのはよいが,殺菌的抗生物質はベロ毒素の遊離を促すので適当でない,というのが大方のまとめであろう.臨床検査室として興味を持たれているのは,ベロ毒素産生菌の早期確認法と血小板数測定であろう.
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