今月の主題 免疫不全症候群と遺伝子異常
話題
遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema;HAE)
香坂 隆夫
1
Takao KOSAKA
1
1東京西徳洲会病院 小児難病センター
キーワード:
C1INH
,
浮腫
,
ブラジキニン
,
分子標的薬
,
遺伝子
Keyword:
C1INH
,
浮腫
,
ブラジキニン
,
分子標的薬
,
遺伝子
pp.621-628
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101984
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1.はじめに
C1 inhibitor(C1INH)欠損症は,古くから遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneurotic edema;HANE)の名前で知られていたが,現在は遺伝性血管浮腫(hereditary angioedema;HAE)が正式名称となっている.本症は補体欠損症の中でも症例数が多く,皮下浮腫から,窒息,消化管イレウスなど派手な症状を呈する.皮下浮腫はいわゆる硬性浮腫でクインケの浮腫の名でよく知られるとおり,古くからの由緒ある疾患である.しかし,案外,臨床家の間で見逃され,軽視されてきた.その理由は,診断後の治療に関して特効的根治的な治療方法はなく,特に急性期の治療に関してはお手上げの状態であった.しかし,血漿由来のC1INH製剤がわが国でも発売され,その補充治療が可能となった.さらに,この疾患の発症原因がブラジキニン(bradykinin)によるものと判明し,直接この系を抑制する治療薬が分子生物学的手法により開発され,著効の治験結果が得られ,本疾患を見落とすことが臨床上許されなくなった時代的背景がある.実際,米国では医師会からの注意喚起がなされ,また米政府もこの報告書を受け入れた1).分子標的薬や生物学的製剤は米製薬業界の経済的重点項目であることも関連し,政府の後押しを受け,医療界への認識が一気に広がっている2).今や本疾患は,免疫,補体の専門家だけでなく,救急を扱う医師にとっても熟知すべき疾患の一つとなった.
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