特集 ホルモンの病態異常と臨床検査
コラム
アクアポリンと脳浮腫治療
高柳 猛彦
1
,
祖父江 和哉
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学分野
pp.1366
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101802
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脳浮腫は,脳の容積増加を伴う水の異常集積と定義される.頭部外傷,脳出血,脳梗塞,脳腫瘍などの疾患に付随して発症する病態であり,救急・集中治療領域において日常的に遭遇する.脳浮腫の悪化は,二次的神経損傷を起こすだけでなく,脳ヘルニアを引き起こし死につながるため,その治療は重要であるが,現行の治療法には明らかな限界がある.脳浮腫は古くからある概念であるが,発生機序は十分にわかっておらず,その解明は新たな治療法開発につながる可能性がある.
アクアポリン(aquaporin;AQP)は,水を選択的に通過させるチャネルとして1992年に発見された1).脳における発現は,1994年Hasegawaら2)により初めて報告されて以来,脳浮腫に関係しているという報告がなされている3).最近では,脳外傷や脳腫瘍などの様々な障害によってAQPの発現が増強することがわかってきている.AQP4ノックアウトマウスを用いた検討によると,急性水中毒や脳虚血により脳浮腫を作成すると死亡率が改善されることから,AQPは脳浮腫の発症あるいは進行に関与している可能性がある.一方,同じAQP4ノックアウトマウスに血管原性浮腫を作成すると,脳浮腫の治癒の遅延が報告されており,AQP4は脳浮腫の増悪因子であると同時に,治癒過程にも関与する可能性が示唆されている.このように,脳浮腫の過程において,AQPの機能には二面性があると思われる.
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