今月の主題 アルツハイマー病の最近の進歩
トピックス
アルツハイマー病の実験的遺伝子治療
岩田 修永
1
,
西道 隆臣
1
Nobuhisa IWATA
1
,
Takaomi SAIDO
1
1独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター 神経蛋白制御研究チーム
キーワード:
アルツハイマー病
,
遺伝子治療
,
アミロイドβペプチド
,
ネプリライシン
Keyword:
アルツハイマー病
,
遺伝子治療
,
アミロイドβペプチド
,
ネプリライシン
pp.315-320
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101554
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1.はじめに
アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)は,記銘力の低下や認知機能障害を主徴とした,進行的な神経変性を伴う認知症である.大脳皮質・辺縁系における病理所見では,シナプスの崩壊や神経細胞の脱落に起因する脳の委縮に加えて,老人斑および神経原線維変化などの異常構造物が認められる.老人斑はアミロイドβペプチド(amyloid-β peptide;Aβ)が細胞外で凝集塊を形成したものであり,神経原線維変化は微小管結合蛋白質タウが不溶化し神経細胞内で線維状に沈着したものである.Aβの蓄積は,ADの最初期に起こる病理像であり,疾患特異性が高く,早発型家族性ADの原因遺伝子の変異のほとんどがAβ産生量を増加させ蓄積をもたらすことから,AD成立の中核をなすと考えられている(Aβ仮説)1).このように,ADの発症前予防や根本的治療のためには脳内Aβ量を低下させることが必要であり,Aβの産生抑制,分解促進,沈着Aβの除去や沈着抑制を標的として国内外で競争研究が展開している.
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