今月の主題 食中毒,その発症をめぐって
話題
毒素原性大腸菌におけるフルオロキノロン系薬剤低感受性菌の出現
松下 秀
1
Shigeru MATSUSHITA
1
1東京都健康安全研究センター多摩支所微生物研究科
キーワード:
毒素原性大腸菌
,
薬剤耐性
,
フルオロキノロン系薬剤
Keyword:
毒素原性大腸菌
,
薬剤耐性
,
フルオロキノロン系薬剤
pp.501-504
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101180
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1.はじめに
毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli;ETEC)は,熱帯・亜熱帯地域の開発途上国においては,下痢起因菌として最も検出頻度が高く,わが国などの開発国から,それらの地域を訪問した旅行者が下痢症に罹患する,いわゆる旅行者下痢症の重要な原因菌となっている1).また国内においても,本菌による集団・散発食中毒事例が,毎年かなりの数報告されている2).ETECによる下痢症でも,症状の激しい場合は,通常抗菌剤による化学療法がなされる.現在本菌を含めた細菌性下痢症の治療には新キノロン剤と呼ばれるフルオロキノロン系薬剤(FQ)が汎用されている.しかし,近年FQに耐性あるいは低感受性を示す各種腸管系病原菌の出現が問題となっており,低感受性菌が原因の場合でも,腸チフス・パラチフス,細菌性赤痢において治療が困難,あるいは治療後再発した症例が報告されている3~8).
本報では,東京において海外旅行者下痢症例より分離されたETECにおけるFQ低感受性菌の出現状況について述べる.さらに,検出されたFQ低感受性菌の他薬剤と合わせた耐性パターン,毒素産生型とO血清群,およびDNAジャイレースサブユニットA遺伝子(gyrA)上のキノロン耐性決定領域(Quinolone resistance determining regions;QRDR)における変異についても検討を加えているので紹介する.
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