特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
4章 プロテオミクスの展望―この先どこへ行きつくのか
1. 臨床プロテオミクスとバイオインフォマティクス
戸田 年総
1,2
Tosifusa TODA
1,2
1財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所プロテオーム共同研究グループ
2TMIGプロテオーム共同研究センター
pp.1439-1442
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101032
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はじめに
1995年にMarc Wilkinsら1~3)によって始められたプロテオーム研究(プロテオミクス)は,二次元電気泳動法で分離された蛋白質を同定するための手段として,質量分析計によるペプチドマスフィンガープリント法4,5)を採用しただけのものに過ぎなかった.しかしながら,蛋白質の集合を言い表す「プロテオーム」という概念が新しい研究の方向性を目指していた分子生物学者たちの心を掴んだことと,質量分析計の感度が従来のエドマン分解ペプチドシークエンサーに比べ2桁以上も高く,しかも10分の1以下という短い時間で同定ができる性能を有していたことが,多くの生化学者によって高く評価され,それ以後の蛋白質分析の方向性を大きく変えることとなった.それまでの蛋白質研究においては,たった1つの蛋白質を同定することですら大変手間の掛かる作業であり,多量のサンプルから種々のカラムクロマトグラフィーによる分離分画を繰り返して蛋白質を精製する必要があった.それに対し現在のプロテオミクスでは,たった1枚の二次元電気泳動ゲルから数百個の蛋白質スポットを切り出し,わずか2日間で同定作業を終わらせるということも決して不可能な話ではなくなっている.これは,二次元電気泳動法が蛋白質を分析する手段であると同時に精製の手段としても使えることを意味し,最近のナノテクノロジーの柱である蛋白質分析の微量化と高速化の口火を切ることとなった.
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