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はじめに
磁気マーカーとSQUID(superconducting quantus interference device:超伝導量子干渉素子)磁気センサを用いた磁気的な免疫検査法について述べる.本方法では,磁気ナノ粒子で標識した抗体(磁気マーカー)を用いて,抗原-抗体の結合反応を磁気マーカーからの磁気信号により検出する.本方法では,未結合マーカーの溶液中でのブラウン回転運動を利用することによりB/F(bound/free)分離なしでの免疫検査が可能であり,この特長を利用すれば蛋白質の高速・高感度検出が期待できる.最初に,筆者らが開発している磁気マーカーおよび検査システムについて述べ,次に,本システムを用いた免疫検査の例としてIgEの検出結果を示す.
磁気ナノ粒子のバイオ分野への応用に関しては,これまで多くの研究がなされている1).代表的なものとしては,磁気ナノ粒子を用いた蛋白質や細胞の磁気的な分離・精製が挙げられる.また,MRI画像用の造影剤としても用いられている.これらの応用では磁気ナノ粒子は磁気ビーズとも呼ばれており,多くの市販品がある.
近年,磁気ナノ粒子の新しい応用分野として,ハイパーサーミア,ドラッグデリバリー,および免疫検査への展開が期待されており,これらの応用に最適な磁気ナノ粒子と装置システムの開発研究がなされている.本稿では,このなかの磁気ナノ粒子を用いた磁気的な免疫検査法について述べる.
免疫検査は種々の疾患由来の蛋白質を抗原-抗体の結合反応を用いて検出する方法であり,医療診断において多く用いられている.近年,多種類の微量な蛋白質を高速・高感度に検出する重要性が高まっており,そのための検査システムの開発が切望されている.このため種々の検査法が研究されているが,そのなかの1つが,本稿で述べる磁気的な検査法である.この検査法では,磁気ナノ粒子で標識した抗体(磁気マーカー抗体)を用い,抗原-抗体の結合反応を磁気マーカーからの磁気信号により検出する.本検査法には,従来の光学的手法にはない超高感度性やB/F分離不要の機能が期待されており,これらが実現すれば,微量な蛋白質の高速・高感度検出が可能となる.
本稿では,最初に磁気マーカーを用いた免疫検査の原理について述べる.次に,抗原に結合した磁気マーカー(Boundマーカー)と未結合のマーカー(Freeマーカー)の磁気特性の違いについて述べ,この特性の違いを利用すればB/F分離なしでの検出が可能となることを示す.さらに,磁気マーカーからの磁気信号を高感度に検出するための測定システムについて述べる.最後に,磁気マーカーを用いた磁気的な免疫検査実験の例を示す.
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