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はじめに
30億塩基対からなるヒトゲノムの解読が完了し,その遺伝情報から疾患関連遺伝子の同定が現在盛んに研究されている.これらの遺伝情報は,予防医学,ゲノム創薬,テーラーメイド医療への応用が期待されている.ヒトゲノム塩基配列は,個人個人によりかなり多くの部分で異なっており,一般にこの塩基配列の違いは多型と呼ばれている.疾患に関連する遺伝子の多型には,通常遺伝によって受け継がれるものと,後天的に生じる突然変異がある.個人個人の疾患に対するかかりやすさは,このゲノムに存在する一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphisms)が重要な鍵を握っていることが明らかにされつつある.一塩基多型とは,遺伝子の塩基配列が1か所だけ違っている状態を指し,30億塩基対のうち,一塩基多型は,実に約300万個存在すると言われている.このようなSNPの検出には,短時間,安価,簡便かつハイスループットに検出する技術が求められている.このSNP解析技術として,ここ10年の間に電気化学的手法1),表面プラズモン法2),QCM(Quartz Crystal Microbailance)法3),比色検出法4),マイクロチップ法5)など数多くの方法が開発されてきた.しかしながら多くの場合,プローブDNAの基盤への固定化の煩雑性や再現性などの問題が残されており,このことが遺伝子解析のコストを上げる1つの要因となっている.
最近われわれは,DNAのハイブリダイゼーションを,逆ミセルという孤立したナノ空間で行うことに成功し,逆ミセル溶液中でのDNAのハイブリダイゼーション速度の違いを利用してSNPを検出する新しい手法を開発した6~9).本逆ミセル法では,プローブDNAの固定化を必要とせず,溶液系で簡便にSNPを検出可能である.ただ本手法は,新たなSNPを見つけ出す手法ではなく,様々な疾病に関連する既知のSNP情報から,そのSNPが存在するかどうかを簡便に判定(診断)する手法である.
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