特集 動脈硬化-その成り立ちと臨床検査
3章 より繊細な診療を求めて―これからの冠疾患危険因子
14. 血清ホスホリパーゼA2
川端 健一
1
,
久木山 清貴
1
Kenichi KAWABATA
1
,
Kiyotaka KUGIYAMA
1
1山梨大学大学院医学工学総合研究部内科学第二
キーワード:
ホスホリパーゼA2
,
粥状動脈硬化
,
炎症性メディエーター
,
冠動脈疾患
Keyword:
ホスホリパーゼA2
,
粥状動脈硬化
,
炎症性メディエーター
,
冠動脈疾患
pp.1343-1348
発行日 2004年10月30日
Published Date 2004/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100603
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はじめに
血管は1層の内皮細胞と,その周囲に血管平滑筋細胞や周皮細胞からなる細胞群と細胞外マトリックスによって構成されている.病的刺激に反応した血管内皮細胞の機能が破綻することで血管壁の構成細胞が再構築され,動脈硬化の進展が始まる.粥状動脈硬化病変巣は,コレステロールエステルを有する泡沫細胞によって主に構成されているが,単核球およびT細胞などの炎症性細胞も多く存在している.泡沫細胞自身もそのほとんどが血中の単核球由来で,それが血管内膜下に移動し低比重リポ蛋白質(low density lipoprotein;LDL)を貪食する一連のプロセスにはサイトカイン,ケモカインや成長因子などの極めて多くの炎症性メディエーターが重要な役割を果たしている.このように粥状動脈硬化の病態を慢性炎症性変化としてとらえる概念が受け入れられつつある1).
近年,分泌型ホスホリパーゼA2が炎症部位に発現増強し,その病態に深く関与していることが知られている.本稿では,膜リン脂質からアラキドン酸遊離に続く脂質メディエーターの産生を介して炎症病態に関与するホスホリパーゼA2について概説するとともに,筆者らが報告したIIA分泌型ホスホリパーゼA2について,動脈硬化・心血管病の発症・病態に関する知見を紹介する.
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