特別寄稿
実践から病院情報システムの功罪とそのあり方を考える・8(最終回)—今後のあるべき医療情報システム—カオス・複雑系医療への序章(その2)
田原 孝
1,2,3
,
日月 裕
4
1日本診療録管理学会
2日本診療情報管理機構会
3日本福祉大学
4阪和第二泉北病院情報管理室,麻酔科
pp.233-239
発行日 2001年3月1日
Published Date 2001/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903223
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(第60巻2号より続く)
医療データの再利用における本質的な問題点(承前)
3.病名頻度と順位の相互作用
この問題について考える前に,病名がどうしてべき分布になるかについて考えておこう.べき分布は今までに様々な分野で発見されている.表1にいろいろな分野で発見されているべき分布の例を上げている.純粋な物理現象から株価の変動のような経済現象にまでこの分布が認められる.このことは,広い分野にわたって共通のメカニズムが働いている可能性を示唆し,その共通のメカニズムを研究するため,分野を超えた概念が必要であることを示している.このような分野を超えた共通の対象認識としてカオスや複雑系という概念が生まれてきた.
多くのべき分布の中でも,言語におけるZipfの法則は病名との共通性において重要である.Zipfの法則とは文章中の単語の出現頻度を頻度順に並べた時の順位と,その単語の出現頻度の間にべき法則が成り立つというものである.これは,病名の分布とよく似た法則である.Zipfの法則に関してもその分布の原因についてはっきりした定説はない.しかし,少なくとも各単語の出現が文章におけるその単語の前後の文章(文脈)に依存することが必要であると考えられている.
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