連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・9
リスクマネージメントの構築(1)
川村 治子
1
1杏林大学保健学部保健学科成人保健学教室
pp.562-565
発行日 1999年6月1日
Published Date 1999/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902731
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今年初めの横浜市立大学病院の手術患者誤認事故は医療に対する信頼を根底から揺がすショッキングな事件であった.しかし,時が経った今考えてみると実に学ぶことが多かった.それは,かつて医療事故に関してこれほど詳細な調査がなされ,報道や報告書という形で情報が公開されたことはなかったという点にある.当初は看護婦間の引継における患者情報の連携エラーと報道されたが,その後様々な組織上,システム上の問題が明らかになった.医療事故も産業界における事故と同様,「システムとヒューマンエラー」に関する学際的研究の対象として積極的に委ねられるべきではないかと思われた.
ところで,日本の労働災害の発生率は世界最低だそうだ1).わが国の産業事故対策にかけた英知は大きな成果を生んでいる.彼らから多くのものを学べるはずと思っていたが,今回の事故をきっかけに航空や鉄道の安全担当の責任者と話をする機会を持てた.両者は産業界の中でも特に事故の社会的影響の多い領域で,安全運行にかける努力を垣間見た思いがした.また,誤認と産業事故に関して研究している認知心理学の学者は今回の事故報道を聞き,「異常な情報」を判断ミスしていくところは分野は違っても共通していると驚いていた.
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