特集 現代の危機管理
予防医学におけるリスクマネージメント理論
酒井 亮二
1
1東京大学医学部公衆衛生学
pp.881-885
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901798
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傷病は「好ましからざる状態がおきる確率」と定義されているリスクである.インフォームドコンセットに例をみるように,医療行動の決定因子は「健康リスクの認識度である」ことは明らかである.リスクマネージメントに関する臨床論文は年々膨大な数であり,傷病を健康リスクとして取り扱うことに強い関心が持たれている.一方,今日危機管理の必要性が叫ばれている.ここで,危機は一般に「リスクの転換期」と定義されるリスクの特殊な1つの様相であるので,リスクの予防に対し社会的関心と要求が高まっていることが伺われる.これは,地球環境問題に例を見るように,便利さを追求して増えている技術が健康と生存上のリスクを日々増大させており,また環境汚染,交通事故予防対策など個々のリスクごとに予防医学対策を策定する方法では予防対策の国家費の際限がなくなる危険をはらむとの社会認識が強まっていることにもよる.これらの結果,増大する様々なリスクの予防のために合理的なリスクマネージメントの確立が今日期待されている.傷病をリスクとして科学的に取り扱うことは医学の広範な領域で必要とされる基本的立場であるが,以下では予防医学でのリスクマネージメントを検討する.
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