特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅰ.耳鼻咽喉科感染症の基本をマスターする
7.院内感染とリスクマネージメント
齊藤 秀行
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.51-56
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101818
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Ⅰ はじめに
院内感染とは,病院など医療機関内で新たに接触した微生物による感染症に罹患することであり,市中感染と対をなす用語である。医療機関はさまざまな感染症に罹患した患者が訪れる場所であり,しかも,何らかの体調不良を訴える人が多く集まる場所であるから,当然,病原体に対する抵抗力が低下した人も多い。したがって,医療機関では,感染症の集団発生を生じることが多く,市中感染にない特殊な注意を払う必要がある。
特に耳鼻咽喉科は,上気道の感染症を生じた患者が受診することが多く,その多くは伝染の可能性があるため,それぞれの感染症の特徴を把握し,それに応じた対策が必要である。
一方で,現在では抗菌薬の開発が進んでいるが,皮肉なことに抗菌薬の使用量が増加するにつれ,抗菌薬に対して抵抗性を獲得した病原体が多く出現し,それらに対しては,耳鼻咽喉科に限らず病院全体をあげての取り組みが必要な状況になってきている。
本稿では,まず,院内感染対策全般について述べる。次に,耳鼻咽喉科として注意すべき上気道感染症を生じる病原体と,院内感染対策として重視される多剤耐性菌について簡単に取り上げ,それぞれに対する対策を述べる。最後に院内感染に対する組織的取り組みについて述べる。
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